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『マルタのやさしい刺繍』 ベティナ・オベルリ監督,2006

実家でいい評判を聞いたこともあって観に行ってみた。
スイスの田舎の小さな村で、夫を亡くしてひとり亡夫の店を守りながら寂しく日々を送るマルタは、あることがきっかけで、忘れかけていた昔の夢を思い出す。それは「ランジェリー・ショップを持つ」こと。友人たちに励まされてマルタは実際にお店を開くが、田舎の村の保守性たるやすさまじく、「そんなハレンチな店」と非難囂々。牧師である息子にもうとんじられて、マルタは一度はくじけそうになるが……。
保守的な狭い共同体の中で、新しいことに挑戦していこうとする人たちを描いたストーリー自体はそれほど目新しいものではないのかも知れないけど、その人たちがみな上品で、歳はとっているけどみんなかわいらしかった。マルタに勇気づけられたみんながまたマルタを支える構図や、わかりやすい悪役に置かれているフリッツとヴァルターの存在、そして後半のとんとん拍子の展開など、楽しく観られるように撮られている。
ディテールもわりとよく作られていて、老人ホームのパソコン教室が妻曰く「インテリオタクのなれの果てみたいな」じいさんばっかりで、フリーダが入って行くだけでちょっとざわってなって「女性の参加は久しぶりです」とか言ってたりするとことか、なんか妙なリアリティがあってよかった。
あと劇中で使われている言葉はどうもドイツ語のようだったんだけど、途中明らかに「merci」とか言ってる場面があったりして面白かった。それを話すと妻が「あたしたちだってサンキューとか言うでしょ」と指摘してくれて、そりゃそうだなと。