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[半魚人]心に残るゲームたち (28):『ヘビースマッシュ』

■『ヘビースマッシュ』 データイースト/アーケード,1993
今回のお題は『ヘビースマッシュ』。今は亡きデータイーストから 1993 年にリリースされた作品だ。
データイーストのゲームをとりあげるのは初めてだが、個人的には結構好きなメーカーだった。けっこう前に倒産して現存しない会社だが、レトロゲーム世代にとっては前回の『ポンピングワールド』をリリースしたミッチェル(こちらはまだ健在)あたりよりははるかに知名度も高いと思う。
さておき、ヘビースマッシュは架空の球技“ヘビースマッシュ”を題材にしたスポーツアクションゲームだ。ポスターだかインストラクションカードだかに「サッカー&ハンドボール」と書かれていた記憶があるのだが、まあそう言われてみるとそう言えないこともないかなあ、という感じ。
コインを入れて、まずはチームを選ぶ。一応国別対抗戦らしく、9カ国+スペースコロニーが出場している。チームごとの差は「スピード」「パワー」「ディフェンス」の3つの能力と、あと一応得意技があったりなかったりする。能力値は5段階っぽいゲージだが「1」はどの国のどの能力にも無いので実質は4段階になっている。得意技は、例えば韓国はジャンプシュートが強いとか、ドイツはオーヴァーヘッドシュートが得意、とか。
ゲームはフィールド中央の穴からボールが真上に射出されて幕を開ける。ジャンプボールの要領で、双方ひとりずつのプレイヤーがボールを競り合う。手にしたボールは最終的には相手のゴールにたたき込むのが目的だが、そこまではどうやって運んでもよい。持って走ってもいいし、前方に投げてもいい。
フィールドは画面上では横方向に長く、縦幅は約2画面分、横の長さは3画面分ぐらいだろうか。左右の辺の中央にそれぞれのゴールがある。ゴールマウス部分以外はフィールドが全て壁で囲まれているので、タッチラインエンドラインはない。ボールが壁で跳ね返ってきて試合は続行だ。
操作は8方向レバーとボタン3つ。1チーム5人+キーパーひとりだが、同時に動かせるのは常にひとりで、その選手には矢印が表示されて一目でわかるようになっている。動かす選手は能動的に決める/変えることができず、矢印がついている選手を動かすしかない。
自分のチームがボールを持っているときには、ボールを持つ選手をコントロールすることになる。パスを出すと、ボールが手から離れた瞬間から、パスの目標となっている選手にコントロールが移る。
防御側は、ボールを持つ攻撃側のプレイヤーの近くにいる選手を動かせる。近づいて左ボタンを押すとタックル、右ボタンならビームが出せる。いずれも当たれば相手は倒れて、ボールを落とす。
ひとつ憶えておくといいのは抜かれたときの対処法だ。つい後ろから追いかけてしまいがちだが、大抵追いつかないし、かりに追いついてもかなり進まれてしまう。ここは敢えてレバーを前に入れて、操作している選手を画面の外へ出そう。そうすると、後方に残っているボールに近い選手に矢印が移る。この辺りはちょっと癖のある操作になってしまっていたように思う。
ゴールが近づいたらもちろんシュートを狙おう。だが、正面からのシュートは流石につぶされやすい。ジャンプシュートは王道だ。あるいはコーナーポストに向かってボールを投げる手もある。コートの四隅はセンタリング・スポットになっていて、そこにボールを放り込むと中央付近に高々とボールが打ち上がる。上手く位置と高さを合わせると、オーヴァーヘッド・キックでシュートできる。
トリッキイな技としては、ループシュートもあった。ペナルティエリアの隅ぎりぎりから反対側のポストをめがけてパスボタンでボールを放つと、山なりのボールがキーパーを越えてゴールに飛び込む。これはかなり重要なテクニックだった。
キーパーは確か自動操作で、とりあえずだいたいのシュートは取ってくれる……のだけど、取ったあと踏みとどまれるかは別の問題。これは主には相手のパワーとこちらのディフェンス、あと少々の運によって決まる。
能力は「スピード」「パワー」「ディフェンス」の3種類というのは上に書いたとおりだが、重要さの度合いはまるで違う。スピードは攻撃時も防御時も重要で、パワーはシュートを打つときのみ意味があり、ディフェンスに至ってはシュートをキーパーが止めたときしか役に立たない。各チームとも能力の合計は同じなので、大まかにいえばスピードがあるチームほど強く、ディフェンスが高いチームほど弱い。この違いはほんとにばかにならず、おれはスピードの高いブラジルやオーストラリアでクリアできるようになってからも、ディフェンス最強のエジプトでは3面がやっとだった。
試合時間は 90 秒。1点でも多く取っていた方が勝ちだが、この手のゲームには珍しく同点の場合サドンデスの延長戦が 30 秒だけあった。それでも同点の場合ゲームオーバーになってしまうが、わりとプレイヤーにやさしい仕様と言えるだろう。
自分が選んだ国以外の9チームと全て対戦して勝ち抜くと、最後は宇宙人との対決になる。一応能力値は全部最高なのだが、見た目はスペースコロニーチームを塗り直したみたいな感じで、もちろん強いのだけどそこまで圧倒的でもない。ここまで勝ち上がれるプレイヤーなら充分勝負になった。
操作の自動化が非常に思い切っていて、本来球技が持つ緻密さや戦術性などは殆ど欠片も残っていない。でも、走って、投げて、奪い合って、最後はゴールにたたき込む、という、球技の原始的な面白さは全部詰め込まれている。架空の球技を採用することで、細かいルールに縛られる煩雑さからも逃れている。厳密な意味ではスポーツゲームとは言えないのだろうが、これはこれで、スポーツをゲーム化する方法として、中々優れていたのではないだろうか。まあ、データイーストのことだから、細かいことを一切気にしないで作っただけ、なのかも知れないけど。

メモ

  • 以下追記。サブタイトルの「半魚人」は、日本チームが必殺シュートを放つ時のヴォイスのききなし。ほんとは「カミカゼ」と言ってるらしいんだけど、何度聞いてもカミカゼには聞こえなかった。
  • チームごとの能力差はおれが気づいていた以上に大きいようだ。Wikipedia に詳しい。→wikipedia:ヘビースマッシュ 対戦プレイなどすればあるいは差が意味を持ってくるのかも知れないが、ひとりで遊んでいる分にはあまり関係なかった。
  • 6点差以上になるとその瞬間にコールドゲームになる。どうでもいいけどコールドゲームが「CALLED GAME」だというのはこのゲームで初めて知った。序盤だと相手が殆ど棒立ちなので 6-0 も珍しくなかった。7-1 もやったことある。
  • あと、試合中一度も相手にボールを渡さないとボーナスが入った……と記憶しているのだがボーナス名を憶えていない。全国1位クラスのスコアだと殆ど全試合このボーナスを取って勝っている計算だったので、かなりパターン化が可能なゲームだったのかも知れない。