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[Merry Merry Christmas]心に残るゲームたち (30)

先週金曜日はクリスマスだったが、読者の皆様においては如何お過ごしだっただろうか。大晦日にクリスマスの話題というのも微妙に気がひけないでもないが、今日を逃すと来年の今頃まで待たなければならないのでご勘弁願いたい。そう、今回はクリスマスにまつわるゲームをとりあげる。
「クリスマス」「レトロゲーム」というキーワードでおれが真っ先に思い出すのがこのゲームだ。

■『ザ・グレイト・ラグタイムショー』 データイースト/アーケード,1992

データイーストのゲームの中では比較的語られることが少ないように思われるこのタイトルだが、内容の凄さにおいてはほかのゲームに引けを取るものではない。

ジャンルとしては横スクロールシューティングゲームになる。自機は(とりあえず最初は)飛行機で、8方向レバーとボタンふたつというオーソドックスな操作系統だ。左のボタンはショットで、右のボタンはフックを外す操作に割り当てられている。
ショットを連射するほど画面下部に表示されている「GEAR」の数値が上昇していって、ショットパワーが上がっていく、というちょっと変わったシステムを採っている。さらに、ある程度まとめて連射すると自機の周囲に稲妻が出て、それなりに広い範囲に同時にダメージを与えられる。

最初のうちはちょっと連射するだけでどんどんギアが上がり、稲妻もバリバリ出せるから、ついそれだけで進みたくなってしまう。しかし、使えば使うほどギアは上がらなくなり、稲妻も出づらくなっていく。あまり先のステージに進んだことがないので正確なところはわからないが、どうやら終盤では稲妻は必須に近いらしく、前半では温存するプレイが要求されたらしい。
こういうバランスのーーつまり、前半は本気を出さずに進まないと後半余計に辛くなってしまうゲームは、特にアーケードでは時々見られるが、個人的には好きではない。パワーアップはどんどん取りたいし、持てる力はぶんぶん振るいたいたちなのだ。しかしまあ、このゲームに関してはそこはおいておこう。

先ほど右ボタンの説明で「フックを外す」と何気なく書いたが、自機の飛行機にはフック付きのチェーンがついている。フックは自機から垂れ下がっていて、自機の動きに応じて揺れ動く。レバーをうまく回せば、ぐるぐる振り回すこともできる。
そして、フックになにも掛けていないときは、さまざまなものを引っかけることができる。一番オーソドックスで役に立つのがしばしば落ちている爆弾で、これはぶつけると爆発して広範囲に爆風をもたらし、威力も大きい。シューティングゲームによく見られる「ボム」にあたるポジションのアイテムだ。

だが、あらためて書くが、このフックにはさまざまなものを引っかけることができる。敵兵や敵飛行機、デパートの横断幕、道端の消火栓、落ちている木箱、街路樹、自動車、タフガイの像、一面のボスについている風見鶏……信じられないほど多くのものを引っかけることができるのだ。大抵のものは引っかけてもゲーム上はどうということはなく、敵に投げつけると多少のダメージを与える程度だが、思わぬものが爆発して大ダメージになったりもする。そうでなくても、自機が木箱を振り回しているシューティングゲームってのはプレイしていてテンションが上がるものだ。

多彩な乗り物も、このゲームに華?を添えていた。
自機である飛行機は、一発被弾すると火を噴き始め、二発被弾すると墜落する。それでもまだ主人公は死なず、脱出して身体ひとつで戦いはじめる。生身では地上しか進めないし、ジャンプ(右ボタンはジャンプになる)もさほど高くはない。火力はどういうわけか連射だけはめちゃめちゃできる銃一丁だけで、もちろん今度こそは一撃でも受ければ死んでしまう。

厳しすぎる状況だが、まだ生き残れる目はある。生身だと、その辺に転がっている乗り物に乗り込むことができるのだ。強いものだとロケットランチャー付き消防車や火炎放射器を装備した二足歩行兵器、弱いものになるとただの自転車やホッピング。さらには謎のロボット三等兵やら町で逃げまどうゾウやキリンやら、と実にさまざまな乗り物が用意されていて、基本的にそれらはすべてゲーム的には全く意味がない。それでも珍しい乗り物が落ちているとついフックに引っかけてしまったりするし、いざ撃墜されてその乗り物に乗ってみると、あまりのヘンテコさと使えなさに笑うしかなかったりする。

グレイトラグタイムショーってのは、そういうゲームだった。これでもか、これでもかと詰め込んだものが、破綻するでもなく、かといって化学反応を起こすわけでもなく、ただひたすらごちゃごちゃと詰め込まれていた。すごく楽しかったけど、よくできたゲームとはいいがたかった。それでもなにかひどく心に残るところがあった。当時のデータイーストのゲームが、大抵そうであったように。

二人同時プレイもかなり熱かった。双方がともに飛行機に乗っている間は普通の二人同時プレイだが、一方が飛行機を失うと違うゲームになる。なにしろフックにはもう一方のプレイヤーの自機を引っかけることができるからだ。引っかけられた方は方向を決めて弾を打つことぐらいしかできなくなってしまうが、引っかけられている間は完全に無敵になる。文字通り一蓮托生の状況になり、なぜか先に死んだ方が気楽な立場になってしまう。

クリスマスについて触れておかねばなるまい。
このゲームは1面が終わるといきなりラウンドセレクトができる。2面から6面までにあたる5つのラウンドを、どの順番にクリアしてもよい。その5つとは「TRANSPORTER」「IMPERIAL SCIENCE MUSEUM」「CONNY ISLAND」「DETROIT ROCK CITY」そして「MERRY MERRY CHRISTMAS」だった。MERRY MERRY CHRISTMAS はクリスマスムードに染められた雪景色の町(とその地下のなんだかわからない通路)が舞台で、細かく描かれた冬の街は実にいい雰囲気を出しており、作り手の気合いがひしひしと伝わってくるのだが、美しい町並みとは裏腹にゲーム的には5つのラウンドの中でもっとも難しい。これらのラウンドは早く選ぶほど同じ面でも簡単になり、後に選ぶほど難しくなるのだけど、この面に関しては真っ先に2面で選んでもクリアがおぼつかないほど難しかった。

そして、クリスマス面の最後に待ち受けているのが、巨大なサンタクロースだった。画面の縦幅を覆い尽くす背丈のサンタが、右手にベルを持って登場し、「メーリイクリスマース!」と叫びながらプレゼントの木箱を投げつけてくる。構わず撃ち込んでいると急に怒り出し、真青な顔になって、いつの間にか持ち替えたどでかい拳銃をがんがんぶっ放してくる。

とにかく楽しいゲームだった。それは変なセンスを抜きにしても、細部まで描き込まれた背景、独特としか言いようのない操作、ぎゅうぎゅうに詰め込まれたギミックなど、プレイしていて楽しい要素が単純にたくさんあって、しかもきちんと作られていたからだ。でも、ゲームとしては面白いとは言えなかった。稲妻が強すぎるために逆に各場面の攻略を作り上げることが難しく、それでいて上方や後方などから出現した敵がいきなり弾を撃ってきて被弾、というパターンが非常に多いため、ひたすら理不尽だと感じることが多かった。その意味では惜しいゲームだった。そういうところまでしっかり作り込めていれば、長期稼働しても不思議はないゲームだっただろうと思う。

メモ

  • このゲームについては言葉を重ねてもどうもこぼれ落ちるものが多い感じで、実際にプレイしてみて欲しい、と思ってしまう。それはこの文章を書いていることの意義の否定でもあるのだけど、まあそれでもなんでもいいから、という。
  • 難度はかなり高く、それなりにやりこんだけど二人プレイで1コインで6面がやっとだった。それも MERRY MERRY CHRISTMAS を6面に残してだったので、始まる前から絶望的という。1コインクリアできた人はどれぐらい居たんだろうか。あと、そもそも何面まであったんだろう。
  • 上で何の説明もなく「タフガイの像」と書いてしまったのだが、もちろん同社のゲーム『トリオ・ザ・パンチ』に登場するタフガイことサントスの像のことである。サントスが「ここ一番」を打っている姿を象った像が墓場だかどこだかに置かれている。トリオザパンチについてはいずれあらためて書く。必ず書く。
  • ブルースブラザーズみたいな二人組が登場していた。町中でマイクスタンドを前に歌ったり踊ったりしていたかと思うと、しばらくしたら飛行機械に乗って襲ってきたりしていたように記憶しているのだが、ついぞ何者なのかわからずじまいだった。後半には正体を明かすシーンなどもあったのだろうか。(なさそう)