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[川が汚れちゃ困るんだよ]/心に残るゲームたち (34):『Dr.トッペル探検隊』

■『Dr.トッペル探検隊』 カネコ・タイトー/アーケード,1988
『Dr.トッペル探検隊』は 1988 年にタイトーから発売された縦スクロールのシューティングゲームだ。開発元は金子製作所(のちのカネコ)。同時期の『歌舞伎Z』、後年の『大江戸ファイト』など、ねじの外れたゲームで有名な会社だが、『ヘビーユニット』のような地味なシューティングゲームも作っていた。それほど出回りがいい作品ではなさそうだったが、当時入り浸っていたゲーセン(何度か書いている「上高地」)がタイトー系だったためにこのゲームも入荷していて、仲間うちや先輩たちは結構遊んでいた。
川に発生した奇妙な生物を調べるために、トッペル博士が探検船「モリアオガエル号」に乗り込んで川へ向かう、というヘンテコな設定だったのだが、調査が目的の割には普通にシューティングゲームで、片っ端からぶっ殺していた。あと、全面にわたって川が舞台というゲームはちょっと珍しいように思う。ほかには『リバーパトロール』ぐらいしか思い浮かばない。
操作は8方向レバーとボタン2つという標準的なデバイス。左ボタンはショットで、右ボタンは後述する「ペル」の固定/非固定の切り替えボタンになっている。
縦スクロールシューティングながら「地形」があるのが特徴で、ちゃんと「地上物」たる敵砲台なども設置されている。以前『イメージファイト』の時に横スクロールの文法を持ち込んで云々とか書いた覚えがあるのだが、その時はこのゲームのことは全く失念していた。リリースは同年で、もしかするとこちらの方が先にリリースされているほどだから、少なくとも言及すべきではあっただろう。
「川」であるから、ということなのか、このゲームでは壁にぶつかってもミスにはならない。単に自機と弾が通らず、敵によっては時々通り抜けてくる奴がいる、という位置づけだった。ただし画面最下部に居てスクロールで壁に押しつぶされる格好になるとミスとなった。
このゲームではそれほど壁は多くなく、前半4面では左右端以外には殆ど登場しない。ただ、5面と6面に細い通路が登場して、いずれもかなりの難所だったので印象は強かった。
パワーアップのシステムがシンプルながら面白い。特定の敵編隊を全滅させると時々アイテムが出現するのだけど、パワーアップをつかさどるのは「ペル」だった。ペルはいわゆるオプションで、5つまでつけることが可能。『ツインビー』の分身のように自機を常に追尾して動くタイプで、自機が止まると自機に重なって止まる。ペルは付けたときは水色の半透明の状態で、敵や敵の弾は素通りする。その状態で前述した右ボタンを押すとペルを固定することができるが、固定されたペルは緑色になって、敵や敵の弾が当たるようになってしまう。当然当たるとペルは失われる。
ペルは自機が弾を撃つと同時に弾を撃つが、その方向がユニークで、概ね自機の中心からペルの中心に向けて引いた半直線の方向に向けて撃つ。そのため、基本的に非固定ではかなり使いづらかった。例えば前に進みながら弾を撃つとペルの弾は後ろに向かってしまうし、止まっていると1秒ほどでペルはすべて自機と重なり、ペルの弾も全部自機の弾と軌道が重なってしまう。攻撃を受けないというメリットはあったものの、実際には非固定で使う状況は殆ど無かった。
敵は結構左右に広がって出てくるので、なんとか幅広く撃ちたい。そのためには「ペルを非固定にする→小さく円を描いてからちょっと下がる→ペルを固定する」という動きが有効だった。逆にボス相手などで攻撃を集中させたい時は、正面に壁があるところで壁にぴったりくっついてペルを非固定にして少し待つと、自機の前方にペルが狭い間隔で一列にまとまるので、それから固定するといい塩梅だった。
各面の最後ではスクロールが止まり、大型のボスと一対一の対戦になる。みんな図体が大きくて積極的に近づいてくるので、上手くペルの配置を変えながら後ろに回り込んだりしつつ戦うことになるのだが、どういうわけか妙に弱いボスが多く、殆ど苦労しなかった。その中で3面のボスであるカメだけが突出して強く、全面中最強のボスだった。この辺りはどういう調整を施したのか首をかしげるほど。
ボス以外では、やはり5面と6面の細い通路が難しかった。5面の破壊できない鞠のような形の敵が迫ってくるところはいかにもゲーム的な緊迫感のあるギミックで、パターンを作って切り抜けるのが面白かった。6面の左右に大きく通路が曲がっているところは壁の裏の硬い砲台がとにかくめちゃくちゃ強く、砲台にてこずるうちに壁に挟まれて死ぬのが定番の死にかただった。そこが最後の山場で、あとは6面のボスとボスラッシュの7面だけだから、そこを抜けられればクリアしたも同然だった。
全体には地味で、ステージもあまり変わり映えせず、ボスもカメ以外は憶えていないし、どうも印象の薄いゲームだったという印象は否めない。ただ、独特の音色の BGM は中々いい味を出していて、特に1面から4面の曲はシューティングゲームらしからぬ呑気さがあってとても好きだった。5面からはうって変わって暗い曲になり、個人的にはそちらの曲はさほど好きではないのだけど、ゲーム的にも難度が一気に上がるので、曲の切迫感が展開と合致していたのはよかったと思う。
最後にひとつ。
このゲームで一番印象に残っているのは、ピンク色の星型の敵(多分ヒトデ)(川だけど)だ。主に5面以降に登場する雑魚敵で、画面上部に5〜6体続けて出現して次々に体当たりしてくるだけなのだが、とにかくやたら速くて厄介だった。出現時はピンク色の線で星型の輪郭線がある頂点から順番に描かれ、星が完成すると内部にも色がついて突っ込んでくる。星が完成するまではこちらの弾が当たらないので必然的にある程度引きつけて撃たざるを得ない。ヒトデも一編隊を全滅させるとアイテムを出すので、死んだ時の復活ではペルもないのに全部倒さなければならず、やるかやられるかの勝負になることもあった。どうにか全滅させてペルを引き当てた時の高揚感は、今でも忘れられない。

  • 稼働当初の頃は3面ぐらいまでしか行けなかったが、後年秋葉原のトライで見かけて、シンクロ連射にも助けられてクリアできた。シンクロ連がついてると難所ではほぼ 100% 処理落ちするので、流石にぐっと簡単になる。というより、処理落ち抜きでは5〜6面の難所はかなり厳しいんじゃないだろうか。少なくともおれはクリアできた気がしない。
  • ここ3回ぐらい毎度 BGM を褒めているが、おそらくプレイした時期と関係がある。13〜16 歳ぐらいの時期に聴いた曲はその人にとっては特別なものになる、というような研究があるらしく(ほんとかどうかは知らん)、その時期に知った曲はずっと歳を取っても忘れないのだとか。まあ、実際曲自体もよかったとは思うんだけど。