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15x24 感想 -- あるいはいまさらのないものねだり

  • 15x24』を今更再読している。おもろい。一気に読める面白さだ。
  • しかし、当初読んだ時に、勝手に期待したものとは違っていたな、と思っていたが、その印象は変わらない。なにもかもがきっちりとかみ合って、ラストでその全体像が鮮やかに立ち上がる−−みたいなものとは程遠い。むしろ、色々な要素がさまざまにごちゃごちゃに詰め込まれているが、あるものとあるものは絡み合い、一方でいくつかのものは関連性が低く、投げっぱなしにされる。あるレベルでは事件は解決するが、もやもやしたものは残る。
  • 全部が辻褄が合う必要はないし、この登場人物数とプロットでそれは無理だ、とも思う。でも、もう少しかみ合っていて欲しかったというのは正直なところだ。おれのような注意深くない人間が騙される程度には。
  • それはそれとして、詰め込まれている断片は面白いし、ところどころでは組み合わせも上手く機能している。登場人物のモノローグも、時に鋭いものがいきなり登場して驚かされる。登場人物もバラエティに富んでいて、読んでいて飽きない要素は満載だ。6巻で原稿用紙だと 3000 枚に当たるらしいが、それだけを読ませる力はある。
  • ラスト手前の場面からエピローグまではよかった。時間帯と場所の設定がよかったし、気迫のこもったやりとりもよかった。作者もここは絶対書きたい場面だっただろうし、構想・執筆期間を考えると数年間かそれ以上あたため続けたシーンであった筈。その熱がきちんとこもっていて、絵の浮かぶ場面として描けている。素晴らしい。
  • 妻に「井の頭公園とか渋谷とかの土地勘がある方が面白いよね」という話をしたら、「というか東京全体の地理が頭に入ってた方が面白いと思う」と言われてなるほどそうだと思った。この話は 15 人 × 24 時間の物語であると同時に東京についての話でもある。最後に「Tokyo」と書かれているのは象徴的だ。まあ、東京についてはなおさら未消化の要素が多く、物語と呼べるレベルには達していないと思えるが。