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まいにち ツール・ド・フランス!

ツール・ド・フランス第 15 ステージ、大勢に影響は全くない結果だったのだけど、ハイライトで見ていてもすごくどきどきするレースだった。最序盤から IAM サイクリングのマルティン・エルミガーとガーミン・シャープのジャック・バウアーが2人逃げ。集団はそれをあっさり見送って、2人のリードは最大で9分近くにもなる。しかし集団が追走態勢を整えると差はあっさり縮まり、残り 50km で差は2分を切っていた。普通に考えれば2人逃げでこの差では到底逃げ切れるものではない。しかしここから天候が逃げの2人に味方する。大粒の雨が路面を叩き、その雨が上がった時点で残り 20km、リードはまだ 1:25 残っていた。


集団からはクヴィヤトコフスキーやマルティンが飛び出すが上手くいかない。必死に逃げる2人は残り 1km のアーチをくぐってもまだ 12,3 秒のリードがある。これはもしかするとひょっとするかも。いつのまにか逃げる2人に完全に肩入れして見ていた。最後の直線、集団が生き物のように2人に迫ってくる。うねる蛇のように、その首がふたつ、みっつに分かれて、さらに後ろからも飛び出してくる。エルミガーは左に大きくよれて、それから右に戻って行く。残り 400m で、バウアーがエルミガーの後ろから飛び出して、道路の右端をゴールに向かって疾走する。


ああ、しかし、なんと残酷な展開か。最後まで脚を残していたスプリンターたちは、残り 50m というところで次々にバウアーを交わし去ってゴールラインを駆け抜けていく。それが視界に入ったバウアーの脚からは力が抜け、最後はペダルを回すのも忘れて 10 位でゴールインし、そのまま右のフェンス際で崩れるように倒れ込んだ。敢闘賞さえも、最初にアタックしたエルミガー(16 位)に与えられ、バウアーには何も残らなかった。立ち上がれないまま泣くバウアーをチームメイトが慰めるシーンをカメラがとらえた。



「ゴール前3kmで、32秒差だと聞かされて、『逃げ切れるぞ』と考えた。おそらく、ジャック(バウアー)も、同じことを考えたに違いない。彼は全力疾走を止めて、『ポーカーゲーム』を始めてしまった。逃げ切りゴールに、よくあるパターンだよね。……もしもフィニッシュラインまで全力疾走していたら、上手く行っていたさ。おそらくね」(エルミガー、ミックスゾーンインタビューより)

「ツールはつくづく残酷だ。逃げ切れる、って最後まで信じていた。ラスト400mまでエルミガーの後輪に張り付いて、それから先はフィニッシュラインまで全力疾走した」(バウアー、ゴール後TVインタビューより)

It's just bitter, bitter disappointment. It's a childhood dream to win a stage of the Tour and for a domestique, like myself, I'm normally working for others. This was my first chance to be up the road and with the chance in the wind and the weather, me and Martin realised we had a chance for the win.
「辛いね。本当に残念だ。ツールでステージ優勝するのは小さな頃からの夢だったんだ。まして僕みたいなドメスティークは普段は他人のために走っているからね。自分にとっては初めてのチャンスだったし、風と天気も味方してくれた。僕もマーティンも、ステージ優勝のチャンスだってわかってたんだ」
※訳は引用者