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『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』 高山文彦監督 サンライズ,1989

先日 youtubeガンダムチャンネルで期間限定公開していたので見た。おれはガンダムは初代以外よく知らんが、これは伝説的な作品と言っていいと思う。すごく知名度が高いわけじゃない*1が見た奴はみんな名作だと言う。時々こういう「特定の界隈で神棚に載せられている作品」というのがあって、SF で言えばトム・ゴドウィンの「冷たい方程式」、ミステリで言えばハリイ・ケメルマンの「9マイルは遠すぎる」あたりがそれにあたる(ミステリは門外漢なのでよくわからんが、Tがそう言ってたのでそうなんだろう)。SF やミステリよりはだいぶ狭いが、ガンダムで言えばこれ、ということになるのではなかろうか。
どんな作品かってのは Wikipedia によくまとまってるのでそれを見ると早い。だいぶ後年になって作られた初代ガンダムのスピンオフ、というのがざっくりした説明だ。

感想としては、たしかにいい作品だな、と。少年の目から見た“戦争”が突然現実になり、その現実がきわめて皮肉な運命となって主人公たちにふりかかるんだけど、全体像が見えている人物は作中にひとりもおらず、ただ視聴者だけがそれを知りうる立場にある。そしてその視聴者はさらに大きな図式も見えていて、その中ではこの物語もポケットの中の戦争にすぎない、という。そのうえでモビルスーツの戦闘シーンや、小学生のアルが巻き込まれる(にはあまりにも大きく身の丈を超えている)冒険はスリリングで単純に楽しくて面白い。名作と言われるのもむべなるかな。瑕疵があるとすれば、最後に作中で本人も自らつっこんでいるところではあるのだけど、バーナードの選択はあまりにもヒロイックすぎるんじゃないかと思えること。そこに切実さがないと皮肉が皮肉じゃなくなっちゃう気がする。が、そういう選択をする者ももちろんいるだろう、という程度には充分な説得力はある。

ところで、冒頭の北極基地での戦闘シーンを手がけているのが磯光雄氏なのだそうで、当時業界内でも評判になって、伝説のシーン的な位置づけをされているらしい。たしかにすごいシーンだった。
最後に公式サイト→http://www.gundam0080.net/

*1:とはいえバカ売れしたらしい。一話あたり6万本売れたとか(Wikipedia による)。