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魔球を求めて

最近はトラックマンとかで投球の球速のみならず回転や変化が正確に測定できるようになってきたようだ。セイバーメトリクスと組み合わせると、どういう球速/回転/変化の球がリスクが低いかというのが見えてくる。たとえばチェンジアップは球速より落差が大事、とかそんなようなことである。しかしトラックマンはどうすればそういう球が投げられるかは教えてくれない。握り方、腕の振り方、手首の使い方、そういうことは投手が自力で身に着けなければならない。そして投手のフォームは十人十色千差万別なので、どういう握りの時にどういう回転がかかってどう曲がるかというのは人によって違ってくる。それによってどういう球が向いているかももちろん違う。誰もがこれを投げればいいという「回答」はないのだ。とはいえある程度は「持ち球」を作れる時代になりつつあるのかもしれない。

で、ちょうどアフタヌーン5月号の『おおきく振りかぶって』でこれの高校野球版みたいなことをやっていて大変面白かった。もちろんトラックマンなんてないのでそこは百枝父が代わりになるわけだが、おそらくはプロに至ってもこのぐらいのレベルのことを最近まではしていたのではないかと思う(もしかすると今でも)。そういう部分がデジタルに置き換えられつつあるというのが面白いし、それを身体動作に落とし込むにはどうしてもまだ経験とか試行錯誤とかが必要というところも面白い。百枝父も多分縦の変化球が向いてるとかチェンジアップやってみろとかまでは言えるけれど、握りについてはいくつか提示して「こんなんとかこんなんとかあるけど、まあとにかくやってみ」みたいな感じだ。こういうのはかなりがっつり取材しないと到底描けないところで、この漫画の真骨頂であると思う。
そのうち筋肉や関節の動きも分析できるようになって、最適な握りもコンピュータが提案できるようになったりするのだろうか。