黄昏通信社跡地処分推進室

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「奈良美智――From the Depth of My Drawer」 原美術館,2004

奈良美智。Tさんが言い出して観に行ったのだが、以前見た印象のまま。そんなに好きでも嫌いでもない。技術的なよさは殆ど素人には伝わりようもないし。ただ、それでも時々心をひかれる絵がいくつかあって、これを凡百のヘンテコイラストと隔てているものはなんだろう、とか考える。そんなことがぱっとわかったら学芸員になれるのだが。
ドローイング、というかまあ要するにノートやらスケッチブックやらへの落書きを集めた部屋があったのだが、そこにあったものは素直な着想が剥き出しになっていて面白かった。ちゃんと仕上げてもよさそうだな、というものもいくつかあり。
原美術館自体はいかしてた。実業家の自宅だったらしいのだが、でかいし無駄な作り満載だし庭は綺麗だし。あんな家に召使い七人ぐらい雇って住みたい。常設展示もなかなか好いものが多かった。一番好かったのは2階の元便所に作られてた「これは飲み水ではありません」だかなんだかってタイトルの奴。部屋の壁が剥がされて配管や配線が剥き出しになっていて、そこに植物の蔓が絡まっている。タイルの裏側にある、もう機能しない水と電気の動脈と静脈。誰の意図するところでもなくそれをたぐって伸びる生命。
館内は若い人中心にかなり混んでいたが、Tさんが中庭でご飯を食べていたマダームからロペス聞きしたところによると、普段はもっと全然閑散としているのだそうだ。さもありなん。