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Netrunner に《Tycho Extension》ってカードがある。


Tycho Extension
v1.0 / Corp / Vital
Agenda - Asset
Difficulty: 4 / AP: 4
このカードがおれがかつて見た日本語訳では《チコ月面コロニーの拡張》となっていて、特に調べもせずへーと思っていたのだが、ティコというクレーターは実際月面にあるのだそうだ。そしてもちろん、その名前はティコ・ブラーエに因んでいる。フレーバーテキストにコロニー拡張が云々みたいなくだりがあるので、extension がコロニー拡張を指していることはおそらく確かだろう。
カードとしては「バニラのアジェンダ」だが、難度4に対してアジェンダポイントも4という破格のコストパフォーマンスを誇っている。シールド戦なら絶対にデッキに入るし、構築戦では禁止カードになってしまった。Netrunner 史上たった2枚しかない禁止カードの1枚がこの 《Tycho Extension》である。
Corporate Deck -- "Psycho Tycho"
Agenda (5)
5Tycho Extension
ICE (20)
10Filter
10Data Wall
Operation (20)
8Project Consultants
8Annual Reviews
4Efficiency Experts
Node (5)
5ACME Savings and Loan
禁止になった一因として挙げられるデッキがこの「Psycho Tycho」だ。デッキリストを見ても判るとおり基本コンセプトは恐ろしく単純で、《Tycho Extension》、《ACME Saving and Loan》、軽いアイス、クイックアドバンス(ていうか《Project Consultants》)、あとドローとビットソースが少々だけ。
動きも簡単単純で、1枚目の《Tycho Extension》をちまちまアドバンスするなり《Project Consultants》なりで獲得したら、あとは手札に《ACME Saving and Loan》と《Tycho Extension》《Project Consultants》が揃うのを待てばいい。3枚揃ったら、AS&L をインストールして即レズ、Tycho をプレイ、コンサルタントを打って勝ちとなる。
この2枚目を獲得するには0ビットで動けるのでビットを貯める必要すらなく、パーツが揃うまでドローするか ICE を貼るかだけしていればよい。アクションも3回しかかからないので、ランナーにはその間に介入する余地が無いというのもひどいところだ。
さらに問題だったと思われるのは、このデッキが安く組めるところだ。Netrunner にはデッキ内に入れる同一名のカードの枚数制限が無く、何枚でも同じカードを入れてよい。これはゲームとしては素晴らしい特性だが、トレーディングカードとしては些か苦しいルールで、おそらく最盛期のトップレアは結構な値がついていたものと考えられる。価格的制限のためにデッキ分布に偏りが生じる状況の中、安くて強いデッキがあったらみんなそれに飛びついただろう。レアを使っていないこのデッキに相当な人気があっただろうことは想像に難くない。
Netrunner では中期以降相互作用のないデッキがしばしば強過ぎて問題になっていたようだ。そもそもマジックで言うところのインスタントにあたるカードが存在しないゲームなので、相手の行動に干渉することはあまりできない。その環境でコンボデッキが成立したらどうなるか……という話で、カードプールが広がった時点で当然突き当たる問題だっただろう。このデッキはほとんど v1.0 のカードで組めるが、「相互作用が乏しくて強い」という点においては全く同じ問題を抱えている。

てなことはどうでもよくて、「Psycho Tycho」っていうからには Tycho は英語だとタイコに近い発音になるんだろうね、ということを書きたかったんだけど、

英語では「タイコ」とも発音する。
Wikipedia にぽつんと書かれていたのだった。誰が何のために書いたんだこれ。